ドナー体験記
私の新しい兄弟さん,こうしてたくさんの人に見守られて
いることを気づかせてくれたこと,感謝しています。     
のりこ(茨城)
 今回,ご縁があってこちらのサイトで体験記を書かせていただくことになりました。
 最初にこのお話をいただいたときは,こんな私が引き受けてしまっていいんだろうか?!と,かなり不安な気持ちになりました。
 でも,この自分に起きた貴重な体験が,誰かの命を助けるための一助となればと思いお引き受けしました。こういった機会をつくってくださったことにお礼申し上げます。        
 みなさんに,ご一読いただけたら嬉しいです。
○入院2日前(2007年2月某日)                       

 骨髄採取もそうですが,入院自体が初めてだったせいか,入院する日が迫ってくると,その「入院」ということにちょっと緊張していました。それは,私に限らず家族もそうでした。
 日にちが迫ってきて,初めて父が「腰のあたりいじって,大丈夫なのか・・・?」と心配してくれている一言を発しました。 いつもは何も言わずに私のやることを受けとめてくれていた父だけに,かなり心配しているんだなと思いました。
 そのうえ,当時母が風邪をひいていて,39度近い熱を出していました。 母のためのおかゆと父のためのご飯を届けに行った時(味噌汁の冷めない距離に住んでます),母の様子を伺うため部屋に入ったら,「今風邪うつしたら大変だから,早く出て行け〜。ゴホゴホ・・・」と・・・。 私の骨髄を待っている患者さんへの思いやりを感じました。
 心配しながらも止めろと言わずに見守ってくれた父と,風邪をひいてツライのに私と患者さんを気遣ってくれる母の存在にが,私の緊張を和らげてくれました。
 そして,今回採取するお話をさせていただいた友達,職場の人たち・・・みなさんが私を気遣ってくれました。私の痛みが少ないように,患者さんが元気になれるようにと思ってくれていることを胸に抱いての採取なので,痛さへの不安はありません。後遺症の心配もありません。
 心構え,完了!

○入院
 私が入院したのは,某大学病院の軽度病棟10階。部屋は5人部屋。最初は緊張していましたが,同質の方が話しかけてくださったので楽しく過ごせました。
 ただ,軽度病棟といえども,みなさんは心臓を患って入院されている患者さん。一人だけ元気でいて,なんだか恐縮してしまいました。
 
 入院2日目が,採取の日でした。
 朝7時,手術着に着替え,T字帯(ふんどしみたいなもの)を装着し,弾性タイツ(全身麻酔中に血栓を作らないためだそうです)を履いて準備完了。
 朝8時,いよいよ手術室へ。手術室に入っていくときは,ストレッチャーに乗って運ばれました。
 手術室は12室ある中で一番「空気がきれいな部屋」と担当の先生がおっしゃっていて,そこで妙な安心感を得ながら,手術室到着。 

 いよいよ採取となりました。ただ・・・全身麻酔のため,何にも記憶がありません。
 「手術台に移動しますよ」と声をかけられた気もしますが,真相はさっぱりわからないです。
 麻酔は,点滴と一緒に入ってくるので,いつのまにか効いていたようです。
 麻酔の効いていた時間は,午前8時15分から10時ころまでの約2時間だったようですが,しばらく半覚醒の状態が続き,採取3時間後(13時ころ) にきちんと目が覚めたらしいです。
 「コーディネーターさんが病室の外で待っているけど,入ってもらって大丈夫?」と看護師さんから聞かれ,「大丈夫です。あ,先にうがいしたいんですがいいですか?」と話し,痛いのを覚悟してなんとか体を起こして・・・・・あまり痛くありませんでした!思わず看護士さんに 「すいません,採取本当に終わったんですか?」と聞いてしまいました(笑)
もちろん終わったとの返答・・・。予想外に動けるぞっ。
 部屋にある洗面台までゆっくり歩いていってうがいをしていたら,コーディネーターさんの声が「すごいっ・・・!」と連呼してました。
 そしてベッドに戻り,コーディネーターさんから痛みがあるかどうかの質問を受けました。

 コ「気持ち悪くないですか?」
 私「ないです。」
 コ「のどに痛みはありますか?」
 私「少しあります。」といってお茶をごくごく。
 コ「腰は痛くないですか?」
 私「少し痛いです。」
 コ「・・・私,10年くらいコーディネーターやっていますけど,採取後3時間で歩いた人初めて見ました。普通ならこの質問していても朦朧としていることが多いんですけど・・・すごいですっ!!」
 私「やった〜!」とまたお茶をごくごく。
 コ「何か質問はありますか?」
 私「もう(骨髄は)運ばれたんでしょうか?」
 コ「はい。今運ばれていますよ」
 私「よかった〜♪」
 
 と,こんな流れで,かなり回復が早かったようです。この時点ですごくお腹がすいていていましたが,採取5時間後でないと食べてはいけないとのことで,しばらくおあずけでした。
 
 夜になって,担当の先生が問診に来てくれました。
 問題なく移植も済んだと聞いて,すごくほっとしました。

 私自身にできた採取跡は,腰あたりの皮膚に左右1箇所。その中の骨には,左右7〜8箇所ですんだそうです。思っていた以上に「濃い血液(細胞密度が濃いということ)」が取れたから,私から取れる最大限の量まで採取する必要がなかったとのことです。
 痛み止めを飲むこともなく,消灯時間を迎えましたが,なかなか眠れなかったです・・・。やっぱりそんなに痛くなくても直接触れるとけっこうな痛さがあったり,角度によってはきしむような痛さがあったりで。
 だとしても,きっとドナーの中でもかなり軽い状態だったんだと思います。

 採取してから2日後に退院となりました。
 皮膚の傷口も,採取翌日にはほぼふさがりました。傷口はいつかなくなってしまうので,跡があるうちに写真撮影しました。 できることなら,残っていてほしいのですが,そうはいかないですね。
 結局,帰宅してから腰の鈍痛と肩がやたら重くなる症状があって,痛み止めを初めて飲みました。立ちっぱなしとか硬い椅子に座りっぱなし,荷物の持ち運びはまだキツイことが判明。
 退院の翌日は,大事をとって職場をお休みしました。

○感想
 インターネットなどから,いろいろな方の体験記を読ませていただいて臨んだ今回の骨髄採取でしたが,あっという間に済んでしまったというのが一番の印象かもしれません。
 痛みもさほどでもなく,吐き気もめまいも何もなく,眠っている間に採取されているから,妙に実感がないというか。 当たり前なんですけどね,麻酔効いてないと採取できないから(苦笑)
 ただ,自分はあっという間の出来事でも,その出来事の間に採取された骨髄は,患者さんが元気になるためにがんばって働く日々が続きます。
 そして,私の骨髄が良い働きをするために,患者さんはこれからも辛く苦しい治療の日々を病院で過ごさなくてはいけません。できるだけ,辛さや苦しさが起きていないよう,今の私には祈ることしかできません。私の骨髄が,患者さんを苦しめていませんように・・・!
 私の血液とまるっきり同じ血液を流す患者さん。ある意味家族よりも濃い関係かもしれません。そのため,自分の中では「兄弟」ができたと思っています。
 新しくできた兄弟さんに,採取後1年以内に2回だけバンクをとおしてお手紙のやり取りができます。少し落ち着いたら,お手紙を書かせていただこうと思います。
 何を書こうか,まだ決めてないんですが・・・。どういう言葉をかけたらいいのか,悩みます。すでにがんばっている方に「がんばって」というのは失礼ですし・・・でも,何か伝えたい。
 あせらずに考えます。

 採取後1年は,ドナー登録保留です。1年がたったら,「登録を継続するか否か」の質問があります。 もちろん,「継続」します!!
 私が今回おじゃましていた病室はみなさん心臓を患っていた方々でした。「健康だからできることよね。私たちにはできないから・・・がんばってね。」との言葉をいただきました。
 なんでもそうですが,「やりたくてもできない」と「できるのにやらない」では,天と地ほどの差あります。私が今度登録しなかったら,後者の「できるのにやらない」になって,助かるかもしれない命を見過ごすことになってしまいます。 そう思うと,登録せずにはいられません。
 幸い,今回の状態を見て,家族の心配も軽くなったみたいなので,また同意してもらえることを信じています。

 それから,採取後は自分の中で何か変わるかも?!と妙な期待(?)があったのですが,今のところそういう気配がありません。
 そこで,自分が変わることより,「患者さんの体調が元気に変わる」ことのほうが大切なんだと気持ちを切り替えました。
 顔も声も何もわからないけど,私の兄弟となってくれた患者さん,こんな姉妹だけど,よろしくお願いします!
 
○最後に
 今回の経験で,いろいろな方に「ありがとう」といいたいです。この場をお借りして・・・。
 職場を何日かお休みしましたが,いつもいやな顔せず承認してくれた職場の方々,ありがとうございました。
 いつも冗談を言いながら緊張をほぐしてくれた担当のお医者さん,お世話になりました。ありがとうございました。
 笑顔をたやさず元気に対応してくれたコーディネーターさん,穏やかな雰囲気でいろいろアドバイスしくださって,ありがとうございました。
最終同意のとき,「どんなに説明されても不安なものは不安です。ただ,妻の意志を尊重したいので同意します。」と言ってくれた私のだんなさま,入院中もお酒を飲まずお留守番してくれて,ありがとう。
 入院前日に「明日から入院だね。がんばってって言うのも変かもしれないけど,がんばってね。」と,わざわざ電話をくれたお義母さん,涙が出るほど嬉しかったよ!ありがとう。
 私の健康な体を保ってくれたたくさんの自家製野菜を作ってくれたお義父さん,ありがとう。
 入院中に,焼きたてのパンが食べたくなったとつぶやいたら,本当に焼きたてのパンをたくさんたくさん買ってきてくれたお姉さん,お腹も心も満たされたよ。ありがとう。
 退院してからも,「無理するなよ。きちんと消毒しろよ」と気遣ってくれたお父さん,ありがとう。
「紀子は,『血』をあげたんじゃなくて,『気持ち』をあげたんだよな。よくやったなぁ。」とさりげなくステキな言葉言ってくれたお母さん,ありがとう・・・。
 自分が単なる自己満足に浸っているだけではないか?すごいことしたんだと自慢したいだけなんじゃないか?と,気持ちが乱れたときに支えてくれたお友達,ありがとう。
 他にも,今回の採取に携わってくださったみなさん,ありがとう・・・!

 そして,私の新しい兄弟さん,こうしてたくさんの人に見守られていることを気づかせてくれたこと,感謝しています。今回のことがなかったら,感謝すべきことを当たり前だと思ったまま過ごしていたかもしれません。兄弟さん,本当にありがとう!!
 
 
 長々と書いた上にまとまりのない骨髄採取の体験記,最後まで読んでくださったみなさんにもお礼を言わせてください。ありがとうございました。
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